小学校現場で奮闘している広島の教師が、目ざす子どもの姿の実現のために「いい授業をしたい」「楽しい学校生活を提供したい」と集って学び合っています。


「つながる」ということ

造形教育広島県大会が11月25日に三原市の沼田西小学校を中心に行われることは、先にお知らせした通りです。

 

この大会を継続的に指導しておられるのが、比治山大学 若元澄男 教授です。(これも前回紹介しました。)

 

一方、その若元先生を中心に、「子どもたちの人格形成につながる美術教育はどうあればいいのか」「大学等の研究と現場の教育をどのようにつなぐか」を共通の課題として、その研究に取り組んでいる美術教育に携わる広島の大学教員等の会があります。メンバーは15名で構成しており、私(奥原)もその一人です。

 

前回の造形教育県大会会場であった広島市立東野小学校にも、この会のメンバーが題材研究から携わり授業支援を行いました。

 

今回の沼田西小学校では、ワークショップという形でメンバーの10名が次の5部会に分かれて午後の約2時間を受け持ちます。

 

 テーマ  「ワークショップ   de  美術教育 再発見!!」

  1.みる活動を通して人づくり

  2.かく活動を通して人づくり

  3.おしゃべりを通して道探し

  4.展示品を通して情報交換

  5.つくる活動を通して人づくり

 

 

「創」で常に述べていることの一つに、手を結ぶ仲間を増やしてほしいということがあります。

教育という仕事は、決して一つの学級や一つの学校で成り立つものではなく、周りの人とどのようにつながるかにその成果を左右する鍵があります。

教師自身ができるだけ多くの人とかかわり、子どものために力を出し合える関係をつくらなければなりません。

 

今回の県大会に、多忙を極める大学教員等のメンバーが、これだけ現場とつながることを大切にするのは、「美術教育を通して子どもの人格形成を目ざしておられる現場の先生方の力になりたい、あるべき方法を共に探し求めたい」という共通の思いからです。

つまり、教育における「つながり」を大切に思う故なのです。

 

今回の造形教育広島県大会で、沼田西小学校を中心とした三原の先生方と私たちの「手を結ぶ教育」の一端にも接してもらえたらうれしく思います。

 

オリンピックを教材に

前回の「創」の時、今回のオリンピックで教師自身が一番心動かされた選手のことを教材にし、夏休み明けに、ぜひ子どもたちと一緒に振り返って考える機会を持ってほしいと言いました。

 

私が今年度指導を担当している新任教員は、水泳200メートル平泳ぎで金メダルに輝いた広島出身の金藤理絵選手を取り上げ、休み明けの一週目に道徳の授業として行いました。

 

新聞記事等で仕入れた資料を整理しながら指導案を一緒に考える過程で、金藤選手の何を一番子どもたちに伝えたいのかを明確にすることにしました。

苦しい練習に耐えた強い気持ちが金メダルという結果につながったのはもちろんですが、今回は、金籐選手のその頑張りのうらにあったくじけそうになった時の家族やコーチの支えに焦点を当てることにしました。

 

 金藤選手の言葉、「応援してくれる人のパワーが私をがんばらせてくれた。」が、そのことをよく語っています。

 

人は誰も、周りの人とかかわりながら生きています。

 

今回、子どもたちと金藤選手の偉業を追うことによって、自分の周りの人の存在に気づいたり感謝の気持ちを温めたりする機会になっていたことを、授業後の感想文から読み取ることができました。

 

このような学習の一つ一つの積み重ねが、子どもたちの生きる力につながるのだと思っています。

 

 

インディアナ大学との国際授業研究会で学ぶ

この度もまた、中村和世先生(広島大学)から、アメリカ  インディアナ大学との国際授業研究会のご案内をいただき、視聴させていただきました。

 

この研究会は、インターネットによる国際会議システムを用いて、教員のグローバル資質の向上と日米教員の授業開発能力を高めることを目的として、インディアナ大学と広島大学の中村先生による美術教育の交流の会として行われています。年2回計画されていて、今回が3回目でした。


今回の発表は、尾道市立山波小学校6年生担任 青山寿重先生の実践でした。

 

瀬戸田町の耕三寺博物館の「百鬼夜行図」を鑑賞した後、「ぼくもわたしもようかい画家」となって自分たちの考える妖怪を描いて巻物にし、その後また博物館の本物を鑑賞するという青山先生開発の題材による実践でした。

 

自分たちが描いた作品も本物と並べて博物館に展示してもらい、子どもたちには一層心に残る取組となったようでした。

 

二度目の鑑賞では、「空間をうまく使っている」とか「妖怪の人柄が表れているようだ」などの子どもの声が聞かれ、「鑑賞―自分の妖怪表現―鑑賞」という指導計画のすばらしさが子どもたちの学びを深めたといえるのではないかと思いました。

 

図画工作科はもちろん、どの教科や活動においても、教師自身が創造性豊かな教材を用意できる力が必須であると、日頃から思っています。

 

教師の感性や教育観によって、教育の質が決まります。教育は正に「教師によって創られる」です。だからこそ教師は学び続けなければならないのだと改めて思いました。

 

 美術教育が求めている創造性と、私たちの「創」において身につけようとしている創造的教育は共にあるものだと認識しています。

 

 今回の発表の青山先生の実践で、教材開発の楽しさや子どもたちの変容ぶりに接して、また担任に戻ってみたいと思うほど、わくわくしました。

8月の「創」  中間発表会

8月の「創」を終えました。

 

今月は低・中・高学年グループで進めている自主研究の中間報告の会でした。

7月までの月一回、グループ研究に当てる時間は1時間ばかりですから、足りない分、どの部会も中間発表前に自主的に集まって話し合いを続けていました。

多忙な日々の中で、皆が時間を合わせて集まって話し合うという姿勢に、よりよい実践力を身につけたいという並々ならない意欲を感じて心強く思いました。 

 

低学年グループは、テーマを「子どもがつながる話し合いを目指して」とし、目指す話し合いの子どもの姿を挙げて整理し、独自の「話し合いレベル」を考えていました。

レベルを作成する過程で、具体的な話し合いの姿をイメージできたと思います。このレベル内容の更なる整理、検討が必要だということになりました。

 

中学年グループのテーマは「書く活動を通して表現力を高める」で、「考えたことを意欲的に書く子ども」を目指しています。そして、書く活動のさまざまな実践例を紹介し、その活動の次には、何らかの形の「紹介する」活動を組み入れ、書く意欲につないでいました。

書いたことを知り合うことによって子どもの価値観が高まるよう、その実態によって方法を固定化しない工夫が次の課題です。

 

高学年グループは「相手の考えを取り入れながら自分の考えを伝えることができる」ことを目指しています。

高学年は具体的な子どもの姿から検証することを進めていて、年度初めから授業のビデオを持ち寄って討議していました。

話し合いにおける目指す子どもの姿をより具体的にすることで、もっと視点が定まるだろうと思えました。

 

研修の回を重ねる毎に、会員の発言にたくましさを感じます。議論することで、自分の考えを整理することができます。

「創」はいつでも、本音の議論ができる場でありたいと思います。

全国高等学校総合文化祭に接して

先日、会員の一人から「今、県立美術館で行われている『全国高等学校総合文化祭』の展覧会にきています。すごいパワーです。」という知らせのメールが届きました。

短い文面から彼女の興奮ぶりが伝わってきました。その思いを共有したくて、時間をやりくりして見に行きました。

 

確かに、それぞれの作品では、自分のテーマに懸命に向き合う高校生の姿が想像され、さわやかな気持ちになりました。どれも若いエネルギーがあふれていて、高校生たちの将来に心強いものを感じました。

県内の特別支援学校生徒ののびのびとした個性豊かな作品も加わって、美術がもつ教育力の大きさを改めて認識しました。

 

案内のパンフレットによれば、本文化祭を「2016ひろしま総文」と呼び、美術・工芸 書道 写真 演劇 合唱 吹奏楽 器楽・管弦楽 日本音楽 吟詠剣詩舞 郷土芸能 マーチングバンド・バトントワリング 放送 囲碁 将棋 弁論 小倉百人一首・かるた 新聞 文芸 自然科学という、25の部門で日頃の活動成果を披露したそうです。

それに、軽音楽 英語 JRC・ボランティア 情報 特別支援学校 家庭等が協賛部門として加わって、実に大きな文化祭だったことを知りました。

 

この文化祭で、どれほど多くの高校生の成長が見られたことでしょう。

 

「祭り」や「発表会」等の教育効果には、とても大きなものがあります。

小学校の教育においても、日々の活動を大事にして、発表会等の行事を一つの節目の教育活動として組み入れ、子どもたちの成長につなげたいものだと思っています。

教師自らが手本に!

メンバーの一人から、次のようなうれしい便りがありました。

 

「先日、市内の研究会で、『近くの人と話してみましょう』という時間がありました。

いつもなら黙って待っているのですが、今回は自分から話してみたり、皆さんに話を振ってみたりして、全員の意見を聞き合うことができました。創での学びのおかげだと思いました。」

 

今、創では、子どもたちの考えをより広げたり深めたりするための「書く」活動や「話し合い」の効果的な方法について研究を進めています。

そして、子どもに求めることは教師自らがその力をつける努力をすることも誓っています。

 

「思うことは進んで発表し、友達との話し合いにつなごう!」という子どもへの指導を実現するために、教師自らがその手本になろうとしている姿が目に浮かびました。

 

こんな若い人の頑張る姿を見たり様子を聞いたりする時、教育の将来に光を見るようでうれしくなります。

7月 創

創の定例会でした。

今日は、授業において大事なことは、確かな教材解釈と的を絞った発問であること、そしてそれが「つながる話し合い」に通じ、子どもたちの幅広く深い思考を引き出すのだということを学び合いました。

 

詩「かたつむり」(リューイ作・いでさわまきと訳)の主題は何かを討議し、そこに迫るための発問を探りました。

時間切れで、止む無く途中で議論を終えることになったのは残念でしたが、元緑井小学校 井西敏恵校長の授業記録によって、2年生の子どもたちの主題に迫るつながる発言の実際に触れました。

これらの主題検討と実践例から、教材解釈と発問の大切さを認識したとの感想が多くあり、ひとまずほっとしたところです。

 

月一回の「創」ですが(月一回だからこそ?)、毎回、準備の段階から緊張感でいっぱいです。毎日多忙を極める中、やっと一週間を終えた土曜日なのに、こうして「教師力を高めるために学びたい」と通う会員の時間を、決して無駄にしてはならないという思いです。

教師としての高みを目指す会員の真摯な姿が、私の活動源となっています。

 

後半は、いつものように低・中・高学年別研究に入り、それぞれのグループで、来月の中間発表会に向けて話し合いを進めました。

グループ研究の「共に学ぶ」心強さや楽しさと共に、共同研究故のつまずきや悩みも力に変えて、多くを学び合ってほしいと願っています。